みんなでつくる、ブカツの教科書。

Vol.002 ウォーミングアップこそ、ベストパフォーマンスを生む。

ウォーミングアップこそ、ベストパフォーマンスを生む。

「普段の練習の中で、なかなか調子があがってこない」「集中するのに時間がかかってしまう」「本番になると、いつもの力を発揮することができない」「部活のわずかな時間で、質の高い練習を行いたいがうまくいかない」などの声をよく耳にします。
メインとなる競技や練習には大きな問題はなさそうですが、ウォーミングアップのやり方をみていると、肩慣らし程度の強度の低いウォーミングアップをしているチームや選手が非常に多く見受けられます。
パフォーマンスの向上を求めるためには、ウォーミングアップのやり方を見直さなければなりません。

ウォーミングアップの役割・効果とは

ウォーミングアップとは、メインとなる競技や練習前に行う準備運動のことで、その役割・効果には、大きく2つあります。

ひとつは、身体の状態をメインとなる競技や練習に向けて整えること。ウォーミングアップを通して体温・筋温を高め、筋への酸素・血流量を増加させることで、筋肉が柔らかくなり、素早く、スムーズに収縮することが可能になります。関節の可動域も広がり、柔軟性が高まり、怪我を未然に防ぐことも可能になります。
また、神経系の働きを高めることで、反応時間が良くなったり、身体を素早く、滑らかに動かすなど、効率の良い動きを引き出すことができるようにもなります。
さらに、ウォーミングアップの時間は、身体の状態に耳を傾ける時間でもあります。どこかに違和感がないか、内臓の調子はどうか、呼吸はどうか、筋肉で痛いところはないか、左右のバランスはどうかなど身体の状態に耳を傾けるタイミングでもあります。

もうひとつは、心の状態を競技や練習に向けて整えること。授業から部活動へと頭と心を切り換え、「さぁ、これから頑張るぞ!」という意識集中の状態を作り上げたり、練習内容をイメージしたりする心の準備を行わせることが大切です。

ウォーミングアップの手順

ウォーミングアップの手順(※ここでは一例を示します)*負荷は少しずつ大きくしていきましょう。

1
ゆっくりとウォーキングから始まり、ジョギング(コートラン)へと行う。
2
ジョギング(コートラン)の中にサイドステップ、クロスステップ、バック走などフットワーク系の種目を取り入れる。
3
ダイナミックストレッチ(反動や弾みをつけながら、あるいは身体を動かしながら筋をストレッチしていく動的柔軟体操のこと。例えば、ラジオ体操、ブラジル体操など)を行う。柔軟性が極端に不足している場合には、状況に応じて、スタティックストレッチ(反動や弾みをつけずに、ゆっくりと時間をかけて筋をストレッチしていく静的柔軟体操のこと)を行ったり、また、チューブトレーニングやバランスボールなどを取り入れたりする。
4
専門トレーニング(ここでは強度を上げて、競技や練習と直結した内容の専門的なトレーニングを数種類ほど取り入れる。例えば、20mダッシュ、ラダー、坂道ダッシュ、ジャンプトレーニング、キャッチボール、メディシンボール投げなど)を行う。

そして本番へGo!

上手なウォーミングアップをしよう。

心拍数を高めて、血液の流れを良くし、体温・筋温を上げるには、20分程度、しっかりとウォーミングアップを行ってください。終わるころには、大汗をかくぐらいでなければいけません。部活動では限られた時間の中で、「心・技・体・戦術」これら全ての質を高める必要があるので、ウォーミングアップに多くの時間を割くことはできません。20分では物足りないという人は、部活動が始まる前に自主的にウォーミングアップを行ってください。グラウンドに出てボールを持った時、コートに入ってラケットを持った時には、トップギアでプレイ出来る状態になっているのが、その人にとってのベストなウォーミングアップです。

普段から意識して、自分にとってのベストなウォーミングアップ(強度・時間・内容など)を見つけること。そして、自分にとってのベストなウォーミングアップが出来れば、本番でもベストパフォーマンスを発揮することが可能になるでしょう。

道上 静香さん

  • 滋賀大学経済学部社会システム学科 教授
  • 1995年筑波大学体育専門学群卒。
  • 1997年筑波大学大学院体育研究科修了。

筑波大学体育センター技官、筑波大学体育科学系助手を経て2002年より現職。専門は、スポーツコーチング学、スポーツバイオメカニクス。2005年より、日本テニス協会・強化本部・ナショナル(ユニバーシアード)チームの女子代表監督・ヘッドコーチを経て、現在に至る。5度のユニバーシアード競技大会を通じて10個のメダル獲得に貢献。主な著書は、「新版 テニス指導教本」(大修館書店、分担)、「スポーツ障害理学療法ガイド 考え方と疾患別アプローチ」(文光堂、分担)など。

はじめまして、道上静香です。テニスの競技選手として活動した後、現在では、ジュニアからトップ選手の指導者として現場に携わっています。大学では、一般学生にスポーツの楽しさや身体を動かすことの意義について教えています。実践現場での経験とスポーツ科学に関する研究を通じて、部活動に関わる皆様のお役に立てる情報を提供出来れば幸いかと存じます。どうぞよろしくお願い致します。

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